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頭の中の日本語

試運転中

シーアの新曲「The Greatest」のMVの感想。

バリ島はガルンガンという宗教儀式があって、ここ数日朝から晩までお供え物を作ったり供えたりと、猛烈ハードな熱中症になりそうな日々を過ごしていました。今日はマニス・ガルンガンという休んでいい日なので、久々にシーアのことでも。

シーアの新曲が出ました。
それとともにシーアが本気のMVも出してきました。
シャンデリアから続くマディーちゃんとの作品。

 

 

歌詞の内容は要約すると「辛いことがあってもスタミナ(忍耐力、生きる力)だけはある、The Greatest(素晴らしい)な気持ちを持つ自由はある、だから諦めないで欲しい」というもの。

初めにこのブログを書いた時点では知らなかったのですが、今回の作品はオーランドのゲイクラブ銃撃事件の犠牲者への追悼メッセージでもあるみたいです。恥ずかしながら、この事件を知らなかったので、虹の涙の意味が掴めておりませんでした(LGBTの尊厳の象徴は虹)。

 

fnmnl.tv

シーアはもう長いことLGBTの権利運動に参加していますので、この事件のショックは相当なものだったと思います。この事件の後のライブで、LGBTの集会でいつも歌っていた「タイタニウム」を歌い泣き崩れている動画を見つけました。彼女のやるせない悲しみが痛いほど伝わってきます。

「タイタニウム」のライブ映像

 

「The greatest」の映像では、最初と後半に繋がる映像で壁と煉瓦を強調していたので、初め見た時に私は壁に囲まれたガザや爆撃で破壊された家が思い浮かんだのですが、虹の涙を踏まえて見ると、LGBTの自由と誇りの象徴であるストーンウォール・インの壁のレンガが塗りつぶされそうになっているようにも見えました。

【以下は最初に見た時の感想です】
シーアのタイタニウムのライブの印象が強いままですが、最初に見た時の感想もそのまま載せておきます。
今回のMVでこの辺もシーアは意識していると思いますし、私がオーランドの事件を知らなかったように、もし知らない人がいたら、伝えたい事でもあるので。。。
前半の映像は難民の子供たちが思い浮かびました。
戦争や内乱などで国に住むことが困難になってヨーロッパを目指した難民の子供たちは保護者もいないことが多く、生存危機や人権危機に直面しています。

 

欧州難民危機:保護者の同伴ない子どもたち-9人に1人が行方不明 ユニセフ、1年近くにおよぶ待機期間を問題視 | 日本ユニセフ協会 | プレスリリース


また後半の映像は私はガザの戦争を連想しました。

 

ccp-ngo.jp


今でも戦争によって心身の傷を引きずって生きている子供たちが沢山います。
MVの赤い壁は被害者たちが流した血のようにも見えます。
以前から、シーアは色々な事件があるごとに、ライブパフォーマンスで言葉を使わないメッセージを送っ.ているように思います。

 

 

このライブは丁度ガザが攻撃されている時期のもの。シーアが足に巻いている黒い紐(服の柄?)を見て、ユダヤ教の人が腕に巻いている黒い紐を連想しました。この時イスラエルのガザ攻撃が凄まじく、沢山の子供たちや一般人も亡くなったので、神の教えを忘れるなという無言のメッセージだったのかなぁと思いました。まあ、黒い紐かどうかがはっきりしないので、私の考え過ぎかもしれませんが・・・このライブの写真を見た時は、そんな風に解釈していました。
 

 

この時はISILによる日本人拘束事件がありました。
殺害されてしまった後藤さんの有名なツイート「目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。それは祈りに近い。憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。−そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」、後藤さんも目を閉じている人だったんですね。

話が色んな所に行ってしまいましたが、
この曲はそんな「Some People Have Real Problems」(ある人々は本当に深刻な問題を抱えている)に向けて歌われているようです。「Some People Have Real Problems」はシーアの4枚目のアルバムタイトルで、彼女の歌には常々、そんなSome Peopleに向けられる思いが込められているように感じます。
もちろん、SIAのことなので、歌詞だけを拾い上げると全く別の状況にもびっくりするほどマッチします。例えば、野外フェスなどで、この曲がかかっても最高に「今の気分」に合いそうです。

しかしPVでこれを出してきたのは、人間としての尊厳を失いそうな、自由を感じられない状況でも、生きていれば、私たちは「The Greatest」な意識を持つ自由がある、生きているだけで素晴らしい、ということを一番に伝えたかったからだと思います。自分が生き続けていることに誇りを持って、とにかく諦めないで生きて欲しいという強い祈りが感じられます。
人権危機にあるとき、諦めないというのは想像よりもずっと難しそうです。
自分の人間としての尊厳が失われるくらいなら死んだほうがましな状況に直面したらどうでしょう。人権危機に瀕した人の自死はいつの時代も無くなりません。
でもシーア自身が死にたい状況から戻ってきた人なので、彼女としてはやはり生き続けることが自分の尊厳を取り戻す道だと伝えたいのだと思いました。

歌詞はテロや戦争や難民で苦しんでいる人だけではなくて、苦しみの只中にいる人達全てに強く訴えかけるように最小限の抽象的な言葉だけ使っています。苦しみのどん底を味わったシーアだからこそ、非常に説得力のある歌声です。
私も以前、死にたくなった時にビョークの「ヨーガ」を聴いて思いとどまることが出来たので、音楽が人の命を救うのは実際にあることだと思っています。ビョークやシーアのような強い意志を持った歌声というのは人の心を「生」に引き戻す力があります。一人でも多くの人にシーアの祈りが伝わることを切実に願います。

夢の風景のような元気に踊る子供たちの姿を見て、私達は一体いつになったら現実社会が抱える悪夢から醒められるのだろう、、、と悲しくなってしまいました。が、しぶとく諦めないでいきたいですね。